近年、地方公共団体による情報発信は大きく変化している。
かつては自治体公式サイトが中心であったが、現在では観光、移住促進、シティプロモーション、国民スポーツ大会(国スポ)、地域イベントなど、個別の目的を持つ専用サイトが数多く運営されている。
例えば、
のような独自ドメインによるサイトが実際に運営されている。
これらは広報上の効果が高く、覚えやすく、SNSとの相性も良い。しかし一方で、運用終了後のドメイン管理という新たな課題も生んでいる。
本稿では、その課題と、既存制度の延長線上で実現可能と思われる解決策について考えたい。
イベントやプロジェクト向けに取得されたドメインは、事業終了後に次の二択を迫られる。
第三者取得を防ぐため、毎年更新料を支払い続ける。
ドメイン1件あたりの費用は大きくない。しかし全国の自治体や関連団体が長年維持し続けることを考えると、累積コストは決して無視できない。
また、本来役目を終えたドメインを「第三者取得防止」のためだけに維持し続けることが適切かという問題もある。
更新を停止し、一般市場へ戻す。
しかしこれには第三者取得のリスクがある。
実際に過去には自治体や国体・国スポ関連サイトで利用されていたドメインが第三者に取得され、全く関係のないサイトとして利用された事例も報告されている。
つまり現在の制度では、
「維持費を払い続ける」
か
「第三者取得リスクを受け入れる」
かの二択になっている。
LG.JPは2002年に創設された地方公共団体専用のドメイン空間である。
創設目的は、電子自治体サービスの普及にあたり、
このサイトは本当に地方公共団体が運営しているのか
を住民に分かりやすく示すことであった。
当時の問題意識としては極めて合理的であり、その役割は現在も重要である。
しかし2002年当時は、
のような需要は現在ほど存在していなかった。
LG.JPは「自治体そのものを識別する」ための空間として設計されたのである。
現在の自治体は、
を個別に運営する時代になっている。
しかしLG.JPの制度は基本的に自治体本体を表すドメインを前提としているため、多くの自治体はブランド性を求めて汎用JPドメインへ向かう。
その結果、
のようなドメインが増える。
そして事業終了後には再び維持か放棄かの問題が発生する。
私はLG.JPの利用範囲を拡張するだけで、この問題の大部分は解決できると考える。
例えば、
のようなドメイン取得を認める。
申請者は地方公共団体職員または正式な行政サービス実施主体に限定する。
LG.JPには既に厳格な登録資格制度が存在するため、その延長線上で実現可能と思われる。
重要なのはここである。
事業終了後は、
という扱いを可能にする。
つまり、
の間に、
という第三の選択肢を設ける。
また、将来的に別の地方公共団体が同一名称の利用を希望する場合には、関係自治体間の協議により再利用を認める仕組みも考えられる。
少なくとも一般市場へ放流されることはなく、公的空間の中で管理され続ける。
ここで重要なのは、
「情報を保存すること」と「ドメインを維持すること」を分離して考えること
である。
例えば国スポサイトの記録を公文書として保存することには十分意義がある。
しかしそのために永遠に nagano2028.jp の更新料を払い続ける必要があるかというと、それは別問題である。
アーカイブは長野県本体サイトなどへ移管し、
pref.nagano.lg.jp/archive/nagano2028/
のような形で保存することも可能である。
その上で、ドメイン名だけは公的空間内で凍結する。
このような運用も十分考えられる。
LG.JP創設時には、
自治体であることを識別する
ことが最大の課題であった。
しかし現在は、
終了した公的プロジェクトをどう安全に終わらせるか
という新しい課題が現れている。
そしてこの問題は、新しい技術を必要としない。
DNSの仕組みも、JPドメイン制度も、LG.JPも既に存在する。
必要なのは、
だけである。
汎用JPドメイン導入に比べれば、はるかに小さな制度変更で実現可能なはずである。
私は、自治体のプロジェクト名やイベント名を一般市場へ放流する現在の構造に違和感を持っている。
問題はドメイン更新料の額ではない。
問題は、
終了した公共事業の名称をどう扱うか
である。
LG.JPは地方公共団体専用という非常に価値の高い名前空間である。
今後は自治体そのものの識別だけでなく、
など、自治体が行う事業のライフサイクル管理にも活用できる余地があるのではないだろうか。
これは新しい制度を一から作る話ではない。
既に存在するLG.JPという公的名前空間を、2020年代の利用実態に合わせて再解釈し、拡張する提案である。